希 Keyboard 夜話

第四夜「ローマ字入力からの卒業」

 ここまでくると、コンピュータ雑誌などのキーボードや日本語入力に関する記事には敏感になる。「WXP」以外の日本語入力 FEP の特徴や機能、かな入力とローマ字入力メリット、デメリット。「DynaBook」のキータッチが良いというのも、この頃知った。

 そしてついに知ってしまうのである、「親指シフト」の存在を……。

 「親指シフト」それは富士通が自社のワープロ専用機に搭載していた、人間工学や独自の日本語解析に基づき開発された日本語入力方式(及びキーボード本体)である。日本語を話すように、リズミカルに入力でき、ストレスフリーな環境を実現。

 これがとにかく入力が速いというのだ。その頃よく行われていた(らしい)、キーボードによる日本語入力スピードを競うワープロコンテスト、そのどの大会でも「親指シフト」遣い(親指シフター)が上位を独占していたという。

 そこまで言われたら、使ってみるしかない!

 本来専用キーボードの使用を前提としたものだっが、これをソフトウェア的に実現しようと、当時 MS-DOS 用に「親指ぴゅん」という無料のソフトが作られた。この「親指シフト」ソフトウェア・エミュレーションの流れは現在まで続いており、様々なソフトウェア/アプリが有志の方々によって開発されている。開発が終了されたプロジェクトもあるが、その度に新たなプロジェクトが立ち上げられ、今でもあらゆる環境で「親指シフト」が利用できる。

 この「親指シフト」、試してみて最初につまずくのは、キーボード表示である。当たり前の話だが、専用キーボードでもない限り、普通日本語用キーボードのキーには、アルファベットとかな入力用の日本語しかプリントされていない。「親指シフト」は独自配列のため、どのキーを押せば、何の文字が入力されるかが判らない。つまりキー配列を丸暗記する(もしくは身体にたたき込む)しかない。強制的なブラインドタッチ習得である(笑)

 まあ1週間ほどで打てるようになり、1ヶ月もすれば「親指シフト」以前のスピードくらいには追いつける。