ホシニネガイヲ

ホシニネガイヲ (4) ☆

   ☆

 あるところに、大きな病院がありました。とても大きな病院で、建物が三つ、それと渡り廊下が三つありました。お空から見るときっと三角の図形のように見えたことでしょう。その病院の名前は星野病院といいました。
(ねえ、星野病院ってここのことだよ)
(そんなこと知ってるよ)
(シィーッ)
 その大きな病院のとある病室に、五人の子供達が入院していました。みんなとっても元気で、とても病気をしてるようには見えません。その五人はいつも一緒になって病院中を探検してまわり、看護婦さんやお医者さんたちに怒られています。その五人の子供達は、女の子が二人に男の子が三人。二人の女の子は、雪ちゃんと、
(あっ、わたしのことだよ)
さっちゃん。
(こんどは、わたしだっ)
三人の男の子は、五郎君と、
(ぼくのことだ)
ひろし君と、
(こんどは、ぼくだよ)
ゆうき君。
(ぼく、ぼく)
 そのなかで、雪ちゃんはここのところ、毎日さみしい気分です。どうしてかと言えば、雪ちゃんが病院に入院してから、一度もおとうさんがお見舞いに来てくれないからです。
 ──そのとき、雪ちゃんは少しさみしげにうつむいた。彼女のおとうさんが見舞いに来ないのは本当のことなのだ──
 雪ちゃんのおとうさんはお仕事が忙しくて、毎日朝早くから夜遅くまで働いています。朝は早く会社にいかなくてはいけないので、病院には寄れません。夜は遅く帰ってくるので、病院はもう閉まっているのです。おとうさんもどうしても雪ちゃんのお見舞いに行きたいのに、どうしてもいけなくて悩んでいたのです。
 ある日のこと、その日雪ちゃんは、お昼寝をたくさんしていたので、夜になってもなかなか眠れません、ずっと目がさめたままでいたのです。あまりに眠れなくて雪ちゃんはしょうがなくベッドから降りて、そっと窓のそばまで行きました。そしてそっとカーテンをめくってお外を見ました。外はとっても寒いのでしょう、病室の窓はびっしりと濡れて曇っています。雪ちゃんは手のひらで窓をぬぐい、窓に顔を近づけてそっとお外を見てみました。そこには真っ黒な空の中にたくさんのお星様がキラキラと輝いています。その小さなお星様たちは、まるで今にも雪のように、キラキラと雪ちゃんの前に降ってきそうです。
 そうやってしばらくお星様を見ていた雪ちゃんは、突然キラキラと本当にお星様が降ってきたのでびっくりしてしまいました。それは白く小さなながれ星でした。
 昔からながれ星が見えている間にくり返し三回願いごとを唱えると、その願いごとが叶うといわれています。雪ちゃんはとっさに、
「おとうさんがお見舞いにきてくれますように、お見舞いにきてくれますように、お見舞いにきてくれますように」
とすばやく願いごとをかけました。
(さあみんな、検診の時間だ。続きは明日ね)