あるてみす (7)


 カケルには、日本海のとある町で『海の家』を経営している伯父さん夫婦がいるとの事だった。カケルは毎年夏になると、ひとりで伯父夫妻の家へ出かけ、二週間ほど過ごすらしい、しかしその年は私を誘って二人で出かけようというのだ。私が躍り上がって喜んだ事は言うまでもない。
 私が今まで本物の海を見たことがない、と言うとカケルは驚いて、本物の海がいかに素晴らしいか、そしていかに大きいかをカケル独特のユーモアを交えて、面白おかしく語ってくれた。もう私の胸は期待でいっぱいだった、どこまでもどこまでも青く広がる空と、その空の広大さにも負けないほど遥かな海原、テレビや写真で見ただけの海のイメージは私の中で、自分勝手にどんどんと成長していった。
 夏休みに入り、両親に旅行の事を話すと、二人は別に自分たちには何も関係のない話のように、知らぬ顔で聞き流しながら「じゃあ行ってらっしゃい」とすまして答えた。てっきり子供だけの旅行には反対するものとばかり思っていた私は、この時ほど両親の無関心さに感謝した事はなかった。
 出発は、夏休みが始まってしばらく経った八月十日に決まった。それまでに夏休みの宿題を全部済ませ、準備万端整える。