続・希 Keyboard 夜話

最終夜「実践! iPhone Text 専用機」

 日常的に、外出先でゆったりリラックスできる時間が多いため、ちょっとかさばるが HHKB と「かえうち」を持ち運び、空き時間に使用してみた。


※iOS かえうちシステム with HHKB Type-S on Mobile Battery

 ディスプレイの大きさ自体は、iPhone6 サイズで十分かな? やはりキーボードは 大きく感じるが、打ち心地は良好、「HHKB Type-S」を使用した場合は抜群の感触で気持ちいいが、高価な品なので「HHKB Lite2」を持ち歩く。

 しかしこの環境、というか iOS の仕様上、完全なインライン変換はできなく、変換候補表示中でもインラインはひらがなのまま、現在の変換状態が判りにくく、漢字変換せずに確定してしまい、ひらがなのままになってしまったり、文字入力中及に [ESC] キーを押すと入力や変換が全解除され、一発で入力前状態に戻ったりする。編集に関しては iPlhone6 を横置き使用前提のため、縦の表示領域が狭く [PgUp] [PgDn] が使えないことが何気にイタい。

 入力はほぼ満足、変換動作と編集系は今ひとつ、携帯性が悪いといったところ。総合的には 75点といった感じ? 常用していこうとは思うが、決して合格点ではないレベル。

 今後 HHKB 専用キャリングケースを購入予定で、携帯性に関しては改善されると期待している。

続・希 Keyboard 夜話

第五夜「かえうち、登場」


※今回の作戦の要「かえうち」

 さて今回のシステムの要である、「かえうち」が到着した。「かえうち」は USB ドングルである、外観は一昔、二昔前の USB メモリといった感じで、希のような Old 世代にとっては普通のサイズだが、今の時代ではかなり大きく感じるだろうか?

 「かえうち」はそのままでは何もできない、PC (Windows, Mac, Linux) に接続し、専用アプリでカスタマイズした設定ファイルを書き込まなければならない。標準で様々なテンプレートが付属しており、「親指シフト(orz含)」はもちろん「Dvorak」「飛鳥配列」「月配列」などは選択するだけで設定できる。

 ただし希の設定では “Control + 英字キー” で希専用の動作をさせるため、さらにカスタマイズを行わなければいけない。設定アプリで Control キーを押したとき専用のページを決めて、最低限の配置を決めた。


※かえうち設定画面

 そのまま Mac のキーボード設定を一時的に OFF にして、Mac での入力テスト。「親指シフト」も “Control + 英字キー” もスイスイ打てる、ということはキーボードと「かえうち」を持ち歩けば、どんな Mac, PC でもこのまま特殊な配列の、希専用キーボード環境を携帯できるということだ。職場の PC も、娘の Mac も、友人のノート PC も、家の Mac と同じように操作できるのだ!

 さてここからが本題、iPhone (iOS) でもこの環境は維持できるのか? ということで iPhone への接続テストを行う。ここでまたまた驚いたのが「かえうち」を経由すると、「HHKB Lite2」も「HHKB Type-S」も共に、モバイルバッテリーの力を借りなくても使用出るということ、「かえうち」の電源制御システムか何かの影響だろうか?

 iOS でどうやっても入力できないのが “PgUp (Page Up)” と “PgDn (Page Down)” と一行スクロール、この辺りはどうも iOS 自体が実装していないように思われ、どうしようもない感じである。

 さらに日本語変換中の「ひらがなへ変換」「カタカナへ変換」「半角英数へ変換後 大文字・小文字トルグ」だ、これらは IM(日本語変換システム)の問題で、やはりこちら側のやりくりでどうにかなるのでもなさそうだ。

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第四夜「iOS と USB キーボード」

 とりあえず「かえうち」が届く前に、キーボードの接続テストを行う。

 ここでびっくりしたのが、「HHKB Type-S」は USB アダプタに挿してスイスイ反応するのだが、「HHKB Lite2」は全く反応しなかったことだ、ただし Lightning 端子にモバイルバッテリーを繋ぐと使用できるようだ。一般的なメンブレン方式で廉価版の「HHKB Lite2」がそのまま使えて、静電容量無接点方式の「KKHB Type-S」の方が、電気を食うと思っていたのだが、実際は全く逆だった。

 iPhone 5S, 6 ともにキーボード操作は良好、ただし iPad 2 が全く反応しない。

 iPad 2 はかなり古い機種で、充電コネクタも Lightning ではなく 30pin コネクタと呼ばれるもので、そもそも接続すらできないのだが、手元に Lightning 30pin 変換アダプタがあったので、USB キーボード Lightning USB アダプタ 30pin 変換アダプタ iPad 2 の順で接続してみたが、うんともすんとも言わない。試しに Lightning USB アダプタ 経由でモバイルバッテリーを接続してみたが iPad 2 に反応はなし、充電できない。30pin 変換アダプタにモバイルバッテリーを直結してみると、iPad 2 に充電できる。どうやら iPad 2 に Lightning USB アダプタが対応していないようだ。まあ時代が違うもんな〜。

 念のために iOS 上での物理キーボードの挙動をチェックすると、何と PgUp(一画面上へ)と PgDn(一画面下へ)が反応しない……、iPhone を変えたりキーボードを変えたり、様々なアプリを試してみたが、結局どれも同じ結果に、iOS は PgUp, PgDn ともに API がないのか、アプリ側が受け付けていないのか?

 次に執筆に使うアプリの選定であるが、これは第一候補として以前から「Ulysses」が気になっていた。サブスクリプション(定額課金)製品だが、Mac, iPad, iPhone どのデバイスでも使え、ファイルの共有も自動、しかも保存操作をせずにシームレスに連携でき、ファイルの順列も手動で整理できる。デザインや機能面のバランスがとれており、シンプルかつ使いやすい。

 その他色々とお試しでインストールしてみる。

 「Ulysses」「Bear」この二つは Mac 版もあり、ファイル共有、編集作業がシームレス、ただしサブスクリプション(課金制)。

 「iライターズ (Lite) 」こちらは低額で買い切り、ただしMac 版はなく、ファイル共有は DropBox 経由、編集作業も手動保存になる。

 「Simplenote」(無料)は自動保存機能など、シンプルながら使い勝手が良さそうだが、iOS メモアプリの拡張版といった感じで、シンプルすぎるのが弱点か? 文字サイズさえ変更できないのは如何なものか。

 それぞれキーボードをつないで動作確認してみる。もちろん PgUp PgDn が使えないのは、織り込み済みで。

 すると本命の「Ulysses」に大問題が、日本語変換中に文節長変更ができないのだ! 結構色々なキーで試してみたが、結局有効なキーを発見できなかった。「Bear」と「iライターズ」では入力関係では特に問題は見られなかった。「Ulysses」はここで落選⤵︎ シームレスな編集が出来る「Bear」が一歩リードか?

 さらに「Bear」はタグ(フォルダみたいな感覚)やファイルの切り替えが、キーボードからできるのだ! 文字入力はキーボードから行えても、その他の操作は画面をタップしなければならないと思っていたが、ファイル切り替えができるだけでも有難い。これは「Bear」だけの特徴である。

 ¥1.500-/年のサブスクリプションだが、総合的に考え「Bear」が 当選だろう。とりあえず1ヶ月間の無料期間で使い倒してみることにした。

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第三夜「モバイル・キーボード」

 さて「かえうち」が到着するまでの間に準備するものがある、接続用のケーブルとキーボード本体、モバイルバッテリーである。

 iOS の Lightning 端子と USB キーボードをつなぐための変換アダプタであるが、Apple の「Lightning – USB 3カメラアダプタ」にする。作業途中の充電切れ対策として、充電用にLightning 端子がついた物を選んだ。Lightning ケーブルは他社製の物はしばらく使うと認識しなくなる物が多いため、かなり高値になるが純正品を選択した。


※Lightning – USB 3カメラアダプタ

 モバイルバッテリーは、現在使用している物は容量もアンペアも低いため、少し大きめの物を買い足した。

 キーボード本体に関しては、いま手元に「HHKB Type-S」と「HHKB Lite2」の二つがある。どちらもモバイル・キーボード候補だ。

 コンパクトなキーボードを購入しようかとも考えたが、ここはお試しでどちらかの「HHKB」を使用することとした。

 「HHKB Type-S」は本体に mini USB 端子があるので好きな長さのケーブルが使えるが「HHKB Lite2」は太っくて 2m もの長さの USB ケーブルが直付けである、iOS 端末との連携を考えるとキーボードの携帯性は絶対条件、ただでさえフルピッチのキーボードはサイズ自体が大きい、さらに 2m の極太ケーブルは致命的だ。そこでまた「HHKB Lite2」への改造を画策した。

 またしてもキートップを外し、洗濯ネットに入れで全部洗う。本体カバー、キートップ共に、プラスチック特有の経年劣化による黄ばみがあったため、漂白しようと Google 先生に聞いてみると、酸素系漂白剤を溶かした水につけ込み、一週間から10日ほど〝紫外線〟に当てろと言われたが、面倒くさいので止めた(笑)

 さて 2m もあるケーブルであるが、基盤の接続部で切断した、そして現在使用していない少し細目の USB ケーブルをぶった切り、内部でハンダ付けした。これで直付けではあるがケーブルを 30cm 程に短くすることが出来た。


※ぶった切られて生え変わった USB

 これで「HHKB Type-S」「HHKB Lite2」どちらでも持ち運び OK だ。

続・希 Keyboard 夜話

第二夜「新しい波」

 2018年のとある日、「親指シフト」に関して検索していると Google に引っかかってきたのは、経済評論家の勝間和代氏のブログであった。そこで「かえうち」という製品を知った。

 「かえうち」とは、PC(スマホ)と USB キーボードの間に噛ませる USB デバイスである。キーボートから出力された信号を別の任意の信号へ書き換える、いわばキーボード翻訳機である。PC(Mac, Windows, Linux)で細かな(本当に自由自在に)設定を行い、その設定ファイルを「かえうち」に書き込むことで、世界にひとつだけの自分専用配列のキーボードを作り出せる。

 これは「親指シフト(その他数多の特殊配列キーボード)」愛用者にとっては、まさに夢のようなデバイスである。

 これまで特殊配列キーボード使用者は、ソフトウェア・エミュレートを使用し、常にOSとの互換性に気を使ってきた。OS のバージョンアップ、またはエミュレータの開発終了によって、いつ使えなくなるかわからない不安を抱えていたのだ。それがこの「かえうち」を間に噛ませると、様々な USB キーボード(さらに変換アダプタを噛ませば ADB や PS2 も)が自分専用のキーボードになる。今までセキュリティの問題でソフトウェア・エミュレータをインストール出来ず、職場では強制的にローマ字入力を使用せざるをえなかった人々も、「かえうち」を使えば、自宅の文字入力環境をそのまま再現できるのだ。もう OS やバージョンの違いを気にする必要はない!

 正に夢の環境!

 そして希にとって最も重要なのは、iOS (iPhone, iPad) 端末に有線で繋げば、今まで諦めていた iOS での「親指シフト」入力や、独自のショートカットキーを使用した文書入力が実現できるのだ。

 iOS 端末ではシステムのセキュリティのため、Bluetooth を含む外部物理キーボード使用時は、強制的にデフォルトの漢字変換キーボード使用となる。つまり「親指シフト」配列も「独自のショートカットキー」設定なども無理。さらにキー配列が US 配列で認識されるため、JIS キーボード等での記号入力が、キートップの表示とは一部変わってしまう。

 そこに(Fn以外の)全てのキー配列を自在に定義できる「かえうち」の登場である。

 「かえうち」は 2017年に “kibidango” にてクラウドファインディングを行い、達成率 780% で成功させた製品で、希はキーボード業界で(ニッチではあるが)このような激震が起きているとは、全く知らずにいたのである。

 もちろん早速注文した(笑)

 常時〝在庫切れ〟状態で、現在製造中のものが発送されるまで、どっしり構えて待つことにした。

続・希 Keyboard 夜話

第一夜「新たな指先の相棒」

 音楽ではなく文字入力の方です──

 もう書くこともないと思っていたこのシリーズですが、どうやら昨年 (2017年) から“キーボード業界”(?)で大きな動きが始まっていたようで……。

 前回、『希 キーボード 夜話 最終夜』において、憧れのキーボードとして挙げた FPU の「Happy Hacking Keyboard Professional JP Type-S」(以下 HHKB Type-S)ですが、なぜか今手元にあります……(汗)


※HHKB Type-S

 まあ簡単に言えば、誘惑に負けてしまったのですな(笑)

 ストレスとイライラがピークに達したある夜の事、呑んでもないのに、ネットで色々とポチりまくってしまい、その中に「HHKB Type-S」があったわけです (´∀`;)

 お財布をかなり直撃するお値段ですので、キャンセルしようかとも思ったのですが、もともと欲しくてたまらない品、キャンセルするはしのびなく、清水の舞台から飛び降りました(笑)

 10年以上使用した愛キーボード、「Happy Hacking Keyboard Lite2 for Mac」(以下 HHKB Lite2)、キーストロークが深くフルキーピッチの本格派で小スペース、デスクは狭くならず快適な入力環境で、長らく愛用していたのですが、いかんせん打音が大きく、ガチャガチャうるさいため、一般的なアパートでは夜間の使用は憚られるほど。


※HHKB Lite2

 そこでネットで情報を集め、キーボードに大々的な外科手術を施したのは、もう何年も前のこと。

 まずはキートップを全部外し、洗濯ネットに放り込み、洗剤につけてジャラジャラ洗う。

 次に本体を分解し、メンブレンシートというものを取り出す。このシートはキー個々に対応した円錐状の山があり、その山がスプリングの役割を果たし、キーの打ち心地、押下の強さを決定する。

 このメンブレンシートの山、押下の力を弱くし打ち心地を軽くするために、ボッコボッコに穴を開け、さらにキーの底面が当たる部分に、薄手のゴムシートを貼る、これでキータッチのチョ〜軽い、檄静音キーボードになり、「HHKB Type-S」に対抗できるかも……等と思っておりましたが、全く方向性の違うキーボードになってしまうのです。




※「HHKB Lite2」
無残に穴を開けられた
メンブレンシート

 まあ実際は、「HHKB Type-S」の打ち心地は、文句なく気持ちイイですよ! 買って大正解でした!

 「HHKB Lite2(改)」のキータッチは柔らかでクリック感も少なく、キーの底打ち感もあまり感じず、打音はほぼしない状態、どちらかといえばメンブレンのシリコンが、湿ったような感触を与え、打感はあるのにスイッチ感が全く無い。

 かえって「HHKB Sype-S」の方はというと、何と「HHKB Lite2(改)」よりキータッチが軽く、こちらは ”スコココ“ といった乾いた音をたて、キーを押した感覚が指に伝わってくる。

 有機的(Lite2)であり無機的(Type-S)である、全く性格の異なる2つのキーボード、しかし入力の心地よさはどちらも良い。しかし打ち比べてみると、圧倒的に「HHKB Type-S」の方が上。潤んだようなしっとりする打鍵感と、乾いた打ち心地と、好みは別れるかもしれない。これは感覚的なものなので、個人差は大きいと思う。