わたしは、ふと目を覚ました。
そこは、白く煙草の煙がうずまく部屋であった。わたしの心の中に、懐かしく響いてくる音楽が流れている。ああ、ここは喫茶店か。わたしは喫茶店のソファの上で眠っていたのだ。
「おう、気がついたかい」
カウンターの奥から、そう語りかけてくれたのは、わたしと同じ顔をした、この店のマスターだ。
カウンターにかけている、わたしと同じ顔をした常連客たちが、口々にわたしを気づかった言葉をかけてくれる。わたしはそんな気のいい連中に声をかけ、ゆらりと店の外へ出た。
左右に、遥かはるか広がる大通り。ここに住む誰もが、わたしと同じ顔をし、わたしと同じ考えをもち、わたしを絶えず気づかってくれる、そんな街。あぁ、なんとここちよいのだろうか。誰もがわたしの家族であり、誰もがわたしの友人。
向こうからわたしに近づいてくる、わたしと同じ顔をした新しい友人、彼に声をかけ、どこか空いている家をおしえてもらおう、そこが今日から新しい我が家だ。