創作詩

航空便


駆け抜ける低い空

雲間跳びゆく影ひとつ


全てを白にする太陽

気持ちイイほど痛い日差し


海の碧 空の蒼

萌え盛る力 地の翠(みどり)


草葉のそよぎ 蝉時雨

水面(みなも)飛ぶ風 飛沫水(しぶきみず)


冷水に浸かれた西瓜(すいか) かき氷

熱い珈琲 焼き鰻(うなぎ)


そそくさと帰る家路に待つ麦酒(ビール)

蚊取り線香 花火花(はなびばな)


幾年も 幾々年も 繰り返す

同じ季節と同じ刻(とき)


いやさ今年はしみじみと

遠い異国の想い女(びと)

創作詩

ゆたゆたと流れるものよ


ただ軟らかく柔らかく

逆らうことなく
足掻(あが)くことなく

穏やかな
また嫋(たお)やかな

時間(とき)の水精(ニンフ)の
誘(いざな)うまゝに


心ひとひら

波の上


たゆたう流れに
押されながらも
全てを任せ
つーっと滑って
行くのもいい

水鏡はゆらぎ
決して同じ景色を写さない

息をひそめて見上げる空は

麗(うらら)かなる陽光
白と黒の激しい光
時には曇に覆われり
雨の雫も滴(したた)らす
紅葉(もみじ)、銀杏(いちょう)を降り散らし
粉雪、綿雪、牡丹雪
水面氷らす凍てつく日々も

また流れ去り
何れ帰り来たるだろう

創作詩

Deja Vu


私は滅びかけた
一つの世界の只中で
夢をみていた

夢見た事が現実となり

過去に観た
記憶の中に生きる自分を……

夢の中の未来の今と
記憶の中の今の過去

繰り返される
反復される
夢の中で

抗う女と従う男

創作詩

海陽風月


あなたが見ている海は
僕が見ている海とは
違うんですね

ただ同じように
輝く波間を
見つめているだけなのに

あなたが見ている海と
僕が見ている海は
違うんですね

太陽のちりちりする日差しも
鼻の奥をくすぐる潮の香も
頬を撫でる海風や
ざざざと寄せる波の音さえも

あなたが感じている海
僕が感じている海
違うんですね

すべての海は
繋がっているはずなのに……
やっぱりどうしても
違うんですね

それでも晴れた夜
見上げた空に
ふたりは同じ
月を観るのです

創作詩

なぜか今夜は


 何故か不思議と胸が痛む夜


 時の流れに埋もれそうで

 自分を見失いそうな哀しみ


 足元を照らすものはなく

 踏みしだく草の香と感触


 頭上に瞬く小さな灯り

 ひとつ

 ふたつ…


 誰かの名を囁こうとしても

 きみ?

 あなた?…


 胸の中でぐるぐると渦を巻く感情

 心を見つめ続けて目が舞う


 焦点を結ばない気持ちの澱(おり)が

 ひとつぶ

 ふたつぶ…


 ずっとずっと過去から降り積っている


 こんな広い世界にひとりだけ?


 もう踏みしめる大地も無くなった


 夜空の中空(なか)に宿る星

 ひとつ

 ふたつ…


 灯りを数え

 ただただ彷徨う

 流されてゆく


 何故か今夜は胸が痛むんだ


        2010/07/05

創作詩

二人の時間


僕が笑顔でいるのは
君の笑顔が見たいから

僕が笑顔でいられるのは
君の笑顔が見れたから

時間は流れてはくれない
幾重にも また 幾重にも
ただ ただ 重なり続けてる
過去を背負い続けてる


僕が語り続けるのは
君の声を聴きたいから

僕が語り続けられるのは
君の声が聴けるから

時間は止まってはくれない
今日も そして また明日も
ただ ただ 過去を押し潰す
静かに降り積もる雪のよう


現在(いま) そう 現在(いま)だけは
僕は君のためにだけに
君は僕のためだけに
笑顔で語り続けてる

創作詩

Open Heart


君が苦しみ続けているのは
僕が君を理解してあげることが
未だ出来ずにいるからだろうか

君の心の奥底を
僕が覗き込もうとする度に
心の迷宮から抜け出せなくなる

Open My Heart
Open Your Heart
ふたつの心を隔てている
深い河を渡っていこう
きっとつながり合う
君と僕の心なら


君が傷つき続けているのは
僕が君をあたたかく抱きしめて
やすらぎを与えられないから

君の髪を愛しく撫で
優しく手を取ろうとする度に
冷たい風が吹き抜ける

Open My Heart
Open Your Heart
ふたりの間に横たわる
切り立つ谷間に向かい合う
ふたりの命の距離ならば
少しづつ小さくなっている


Open My Heart
Open Your Heart
ふたりの前に続いてる
いばらの道を歩いていこう
きっとたどり着ける
君と僕のふたりなら

創作詩

The Day of Wine and Roses


深夜のブルーは深いコバルト
深夜のブラックは淡い漆黒

眠らないこの大都会(まち)でも
喧噪から逃れることができるのか

アインシュタイン
光速度不変の原理
時間は伸縮する
二人の濃密な時間はゆっくりと流れる
それはこの大都会(まち)の
せわしない空気の中で
濃厚に沈殿するように
深いコバルトと淡い漆黒へと……

夜光鳥は羽を広げ
開け放たれた窓から
姫事を見つめるアルテミスの元へ
星の見えない夜空へと
星屑をちりばめた摩天楼の彼方へ
飛び立って行く

The Day of Wine and Roses…

創作詩

裸の自我


目の前で
一枚づつ薄衣を剥ぐように
その度ごとに
ひとつひとつ世界が色づく

その場を満たす香りは
むせ返るほどに男を包み込み

見えてきたのは
今まで知ることのなかった
自分自身の
もうひとつの姿だった

孤独で
傷つき
一糸まとわず
暗い森の中にうずくまる

恐怖と
獣にむさぼられることへの期待?

人は死を賭しても
何者かと繋がっていたい存在なのか?

自身の存在よりも
他者との関係が自我・・・

創作詩

雨の日とバド


しとど降る
雨に打たれる
手折れ花

10年前のあの雨の日
世界が変わるのを見た

湿気に押し込められた通勤電車
曇った窓を拭うと
雨に洗われた世界を見た
Bud Powellを聴きながら

音楽が世界を変えた

それから僕の世界は美しくなった

「貴方が書くのは詩じゃないわ
もっと生々しい叫び・・・」